『ニューヨーク』


2009/08/06





私は、24時間、365日、休みなく介護を受けている。

それはそれで感謝なのだが、私には、休息日がない。

休息があるとすれば、死ぬ時であろう。

長い間、お世話になっているヘルパーさんに、

介護を受けている時が、安息時間になるだろうか。



そんな中でも、毎週水曜日は、コンスタントな楽しみが「入浴」である。

平成7年頃から、巡回入浴サービスを毎週水曜日の午前に受けている。

介護保険が、始まる前は、障害保険で月に2回限り、

入浴サービスを受けていた。

それ以外は自己負担である。

毎月、3万円以上の入浴になるわけである。

平成12年に、介護保険がスタートしてからは、1割の自己負担になった。

それはそれで、大変、大変助かるのだが、

介護保険30万のうちのウエイトが重くのしかかるのも事実である。

できたら、毎週毎月、障がい保険で、対応していただきたいものである。

入浴サービスを受け始めた頃は、

不安と恐怖で緊張してお湯を楽しむどころではなかった。

ダイナミックに呼吸器を外し、自分をダイビングで入浴するわけである。

入浴サービスも、およそ14年になる。



緊張感が、今まで持続するはずもなく、恐怖感に鈍感になってきた。

今や、お風呂の温度を注文したり、

入浴サービスの人と談笑したり、

自分の部屋の様子を観察したりなどなど。

入浴を楽しむ余裕も、ついに、でてきた。



先日は、入浴サービスのお兄さんに、抱っこしてもらって、

17年ぶりに、体重を測ったが、なんと45キロであった。

これには、多少のショックを受けた。

翌週も、測ったら同じであった。

私は、50キロ近くはあると思ったのだが。

ヘルパーさん15人の内で、私が1番の軽量であったのである。

これは、ある意味で、皮肉でもあるだろうか。

ある時、あるヘルパーさんが、

私に「彰さんは、どうやってお風呂に入るの?」

と、素朴な疑問をなげられた。

その時、私は、これを写真に撮り、

私のALSの記録として残しておこうと思った。

しかし、その記憶は、曖昧になり、記憶の底に、埋没してしまった。

今回は、その記憶が、ふと、よみがえり行動した。

行動力とは、精神力とある種の決断力を必要とする。

それに思いつきも。

今回の行動力には、思いつきが、私の背中をおしたようだった。

入浴サービスのスタッフの協力のもとに、数枚のスナップを撮る事ができた。

からの浴槽から、何枚かの私の入浴シーンまでを。

その中の1枚に、私は、目を見張った。

入浴サービスのお兄さんに、抱っこされた私の裸体があったのだ。

頬がこけて、痩せこけた私の裸体が。

私は、その1枚を凝視できなかった。

凝視すると、私の20年のALS歴史の扉があきそうで、

目にあついものが、のしかかってきそうだった。

「ニューヨーク、ニューヨーク」