四月中頃に、気管支炎を患い、死ぬ思いをした。
気管切開をしてから13年余り経つが、初めての経験であった。
痰がひどく、吸引もスムーズにいかず、呼吸困難を来たした。酸素濃度は94%まで下がり、脈拍は100を超えていた。
このままでは死ぬかもしれない、と強迫観念にとらわれた。
改めて、ALSにおいては、死は日常であるという認識を痛感したのであった。
三日目の夜には、薬が功を奏して、鎮静化してきた。難を逃れたのである。
その晩に、不思議な夢を見た。川幅20メートル程の小さな川を横目で見ながら、ただ漫然と歩いているだけの夢である。
現実とは何の脈絡も必然もない夢である。
朝方、その夢の意味合いを、しばらく呆然と考えていたが、あの川が所謂、三途の川ではないであろうかと、思ってみた。
あの川を渡っていたら、生はなかったかもしれない。
私は、所謂、霊界などを信じてはいないが、それ以外に納得する術がない。
今回のことで、ALSの怖さを、再認識するのと同時に、健康管理と衛生管理を肝に銘じたのである。
今回のトラブルは、ALSにピリオドを打つリハーサルではなかったのではないであろうか。
そう思ったら、ALSと真っ向から、対座しているような気になるのである。
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