ALSよもやま話

2006/09/17




ALSという病は、百年以上前に発見されたが、

未だにその原因も治療方法も解明されていない。

各方面で研究は試されていて、

功名を感じさせるマウスの実験データはあるのだが、

今一歩足りず、立ち消えになっているようである。

その辺が、神経難病と言われる所以なのであろうか。

今、私が注目しているのは、ヒトゲノムといわれる、遺伝子治療の研究である。

私も二年程前に血液サンプルを提供し、そのデータに参加してはいるのだが・・・。



十年前にある治験薬の臨床実験に参加したことがあった。

毎月一回、千葉のある病院まで通院し、該当薬を服薬し、指の動きを検査したことがあった。

その治験薬は、『二重盲験法』と呼ばれ、千葉の担当医師も詳細は聞かされていず、

東大の医師だけが、その薬の詳細を認識しているというものである。

一般的に治験というと、百人の患者に対して、

百人全員にその薬を投薬すると思いがちであるが、

実際はそんなに良心的なものではない。

百人のうちの五十人には新薬を配布して残りの五十人には

体に害の無いビタミン剤などを配布するそうである。

そうやって病状の進行などを分析するそうである。

治験薬だと信じていたにもかかわらず、

ビタミン剤を投与されたのでは、患者もたまったものではない。

密かな期待を持って、我先に治験に参加するのも善し悪しである。

一般のモラルでは、何とも残酷な話ではあるが、

医学的には普通のモラルであるようだ。

私の薬の真偽は分からないが、その薬を服薬すると、

胃腸に障害をおこし、気分が悪くなったのは事実である。

おそらく、その治験薬はフランスで開発された、ALSの進行を抑えるといわれた、

リルゾールであろうと思う。



私の場合、ALSの発症のきっかけは、ストレスであろうと認識している。

ある時期、三つのストレスを同時に、体験したことがあった。

一つは、結婚による環境の激変から来る色んな意味でのストレスである。

二つめは、仕事による精神的にも肉体的にも修羅場を味わうというストレスである。

三つめは、いわゆる異性問題のトラブルである。

しかし、その程度のストレスを背負っている人は星の数ほどいるであろう。

その方々が、ALSを発症する確率は限りなくゼロに近いであろう。

発症のメカニズムは、医学の進歩を待つより他ないが、

私の推測では、損傷しやすい染色体が起因したのではなかろうかと思うのである。

いずれにしても、残念ながら私にとってALSは必然であったのであろう。

ますますのストレス社会において、神経難病の患者は増えるであろう。

ストレスを回避することは、社会からドロップアウトすることに近い。

今私があの当時を振り返って見たときに、

なぜ休養を取れなかったのだろうかと思う。

取れない環境にあったのであろうが、

大胆な気分転換をしていたならば、今の私は無かったかもしれない。

今更、悔いても仕方ないが、

多忙をきわめている方々がいらっしゃれば「忙中閑あり」をすすめたい。