『「おくりびと」をみる』

2009/04/13

 




おくりびとという言葉は、造語だろうか。

私にとっては、初耳である。

「納棺師」を「おくりびと」と、タイトルした事が、

この映画の成功した一つの原因でもあろう。

おくりびとという言葉は、いかにも、文学的で、

興味をそそられる言葉である。

しかし、「これで、アカデミー賞というのか?」という感想を、

この映画をみた人は、もったに違いない。

日本の納棺文化というジャパンローカルが、

アメリカンスタンダードには、奇異に写ったのであろうか。

確かに、私も、納棺師という職業を知らなかった。

それにしても、この映画では、納棺文化、納棺師を描ききれていない。

片鱗は、見えるのだが。

納棺シーンあり、夫婦愛あり、父性愛あり、

一人の男の生き様あり、ローカル文化あり………。

あまりにも、盛り沢山過ぎて、テーマが、拡散されている。

この映画は、本木氏の原案によるものらしいが、

彼が、一体なにを訴えたかったのか、曖昧である。

私小説な、思いはわかるのだが。

大胆な構成が、のぞまるように思う。

ただ、この映画にチェロを絡ませた事は、

納棺の生臭さを、消し去るには、効果的であった。

さらにゆえば、オーケストラを納棺シーンに絡ませる事によって、

ある種のハーモニーをかもしだし、

納棺文化を芸術的に昇華させる可能性もあったかもしれない。

いずれにしても、この映画は、スケールも構成も、イマイチであった。

私も、いずれは「おくられびと」になるわけだが、

化粧などを施してもらい、ALSで苦悩した面影を消していただきたいものである。

それにしても、「おくりびと」とは、魅力的な言葉ではある。