『引退』

2008/05/15

 




最近10年の、日本柔道界を支えてきた男、井上康生。

彼の引退は、日本柔道のある時代の終わりを告げる、象徴的な出来事であった。

彼は、「一本」にこだわる柔道をしてきた。

これからは、「勝ち」にこだわる柔道の幕開けでもあるし、

「judo」時代の幕開けでもある。

井上選手に限らず、有名選手の引退は、象徴的にとらえられがちである。

それは、分散していた、その選手のイメージや周辺事情が、

引退によって凝縮するためであろうか。

有名選手の引退で、1番衝撃的な選手は、

昭和49年の巨人軍の長嶋茂雄ではないであろうか。

彼の引退は、野球界のみならず、国民的な出来事でもあり、関心事でもあった。

彼の引退は、時代にも影響を与える出来事であった。

それは、昭和から平成へのプロローグでもあった。

それだけ、長嶋選手は、時代にも影響を与えるほどの人気と支持があった事になる。

一般的に、男性の引退は、還暦か、定年退職になるであろう。

従属していた組織から肉体的、物理的に退くだけでなく、

心理的、精神的に、ある種の解放をも意味する。

その意味では、人生の、象徴的な出来事かもしれない。

私は、ALSによって五体満足の人生から、引退したわけである。

それによって、願望や欲望を諦め、生きていく上での様々な、附帯状況を捨ててきた。

はたして、心理的、精神的には、何から解放されたのであろうか。

私は、あと2年で還暦を迎える。

ある決意、決心を持って、その2年を消化していきたいし、

その決意を凝縮させていきたいものである。