『ケア・カムバック』

2008/03/02

 



およそ、介護ほど、ヘルパー個人の人格や

キャラクターが露骨になる仕事はないであろう。

その意味では、ヘルパーの数だけ、介護のパターンがあるといっていい。

まさに、十人十色である。

ときに、ヘルパーと利用者のキャラクターが、せめぎあう事もある。

当然、トラブルや、いざこざが生じる。

もちろん、愛や友情が生まれる事もある。

介護を媒体として、様々なドラマが生まれるのである。

「ああ、介護」である。

利用者、患者にとって究極の介護とは、無償の愛の介護ではなかろうか。

それは、現実的には、不可能な事であって、

利用者には、虫の善い話で あるが、

ヘルパーにとっては理不尽極まりない。

それに反して対極的な位置にいるのが、「ヘルパーと利用者」の関係を、

ドライに、ビジネスライクに割り切るやり方である。

この関係は、冷徹そうにみえるが、

意外に、感情の行き違いによるトラブルもなく、

お互いに一定のスタンスをキープできる。

これをメリットとして受け取るか、

デメリットとして受け取るかは、利用者によって様々であろう。

最近、私は、この関係も悪くはないなと思い始めている。

私は、数年ぶりに、あるヘルパーさんと再会し、

そのヘルパーさんの介護を受ける事になった事がある。

そのヘルパーさんの介護を受けているうちに、

そのヘルパーさんの独特のタッチが蘇ってくるのである。

「ああ、このタッチだ」と。

そのヘルパーさんを懐かしく思うのは、もちろんの事だが、

それにもまして、そのタッチを懐かしく思うのである。

それは、不思議な感覚である。

愛がなければ、そのタッチも生まれる事はなかったであろう。

「介護は、愛である」を、実感した瞬間でもある。

ふと、見上げると、そのヘルパーさんも微笑んでいたのである。

ヘルパーと利用者が、同時体験した一瞬でもある。

まさに、「ケア・カムバック」である。