「ALSの一分」

2007/8/10




今、ミニ盆栽が流行らしい。

その背景や必然性は、さておき、ミーハーの私としては、

その時流に乗らないわけにはいかないのです。

て、なわけで、「ピラカンス」というミニ盆栽を買い求めたのです。

10cm足らずの丸い鉢に、10cm足らずの幹の、本当に小さい盆栽です。

文豪志賀直哉なら、微入り細に渡り、表現したでしょう。

ミニ盆栽を見ていると、箱庭的な小宇宙の世界に魅了されてしまいます。

その枝ぶりといい、幹のシワ加減といい、本物の幹のプラモデルのようです。

ミニ盆栽は、錯覚、勘違いの芸術でしょうか。

私も四畳半の箱庭的なコミュニティーで社会生活を営んでいます。

ミニ盆栽とはいえ、普通の盆栽と同じように手間がかかるし、

手入れが大変なことを知りました。

安直に観賞できるものではないのです。

24時間全面介助の私が、それなりの社会生活を営むには、

それなりのリスクを負わなければなりません。

変化に対応できる介護体制をつくるには、

それ相当のヘルパーさんが必要になります。

現在、15人のヘルパーさんにお世話になっていますが、

更に若干名のヘルパーさんが必要です。

介護体制が充実すればするほど、

私のストレスとリスクは増していくという、皮肉なあり様です。

私の介護体制にも、手入れは必要ですし、手間ひまがかかります。

ALSといえども、漫然と寝ているわけにはいかないのです。

最近の私は、その手入れに少々疲れてきましたが、

ミニ盆栽は、常に泰然として見えるのは、気のせいでしょうか。

しかしながら、「ピラカンス」の小さい黄色の実は、

依然として、堅く閉ざされたままなのである。