2006/07/25


トルコキキョウ

私は、トルコキキョウという花が好きである。

その花を昔から認識していて好きなのではなく、

ある人にお見舞いにいただいてから、それがきっかけで好きになった。

白い可憐な花びらにふちどりが危うい紫色。

何とも清楚なイメージの花である。

彼女が私の花の趣味など知るよしも無いので、

彼女の趣味か、花屋さんで偶然見つけたのか、

いずれにしても、私の感覚にぶれの無いぴったりの花であった。

出会いはこういうものか、人の出会いもこうありたいものだが。

蘭や百合系の花が好きな方は、自己主張の強い方で、派手な方が多いように思われる。

逆に、菊系や草花系が好きな方は、物静かで奥ゆかしい方が多いと聞く。

彼女は明らかに後者だ。

偶然にも、トルコキキョウにイメージがぴったりの方であった。

彼女は十年以上も前に、ある病院のソーシャルワーカーとして訪問を受け、

三度ほどお見えになったであろうか。その程度の認識である。

痩せ型の面長の、すらりとした、いわゆる美人であった。

その後、病院を退職なさったと聞いたが、その後の消息は不明である。



私が病に倒れなければ、会う筈の無かった人である。

過去現在、私がお世話になっている、ほとんどの方々は、

私が健康ならば、多分会わなかったであろう。

逆に、私が健康なら会っていたであろう方々もたくさんいらっしゃるであろう。

どんな人と出会っていたであろうか。

そう思うと、不思議な気がするのである。

よく、初めて会った方なのに前にどこかであった気がするとか、

初めて来た所なのに前にも来たことがあるような錯覚に陥ることがある。

それをある友人は、前世での体験や経験が、甦るのだと言う。

満更なことでもないかもと、わたしは思う。

そのトルコキキョウの美人との出会いは、ひと昔以上も前のことなので、

記憶が曖昧にになってきて、ほんとに会ったのかなと思ってみた。

幻想かもしれないという思惑が否定しきれなくなってきて、あわてた。

もう彼女と会うことはないであろうが、

毎年五月頃になると、トルコキキョウと共に思い出す人ではある。