私はほとんど夢を見ない性質(たち)である。

たまに見る夢も、ALS疾患の影響の夢を見ることは全く無い。

不思議であるが、心理学的には、どんな要因があるのだろうか。

俗に、夢は現実を反映していると言われているが。

私は24時間介護を受けているので、当然夜勤の方にもお世話になっている。

夜勤の方の寝相にも色々あって、不謹慎ながら、興味深い。

ある人は、夜中の就寝中に、ナースコールで起こすと、

私とは反対の方向に歩き出して、ドアを開けようとするので、

(寝惚けているな)と、

再びナースコールを鳴らすと、我に返る。

私は就寝中に、3回か、4回、吸引や手足を動かしてもらう為に

ナースコールを鳴らして起きてもらう。

私の都合で、起きて頂くので、

夜勤の方には、苦痛を強いることになる。

恐縮するが、それが仕事だから勘弁してもらってる。

ある人は、夜中に起こすと、吸引するつもりで、

呼吸器ではなく、私の鼻をひねってみたり、

ある人は、夜中に突然雨戸を開けようとしたり、

いずれも、再びナースコールを鳴らすと、我に返るようである。

ある時、不自然な物音に目を覚ました。

よく聞き耳をたててみると、ある宗教の念仏のようであった。

「おやおや」と。

私は、呼吸器をつけているせいもあって、

眠りも浅く、長く持続しないので、

何かの変化ですぐ目を覚ましてしまう。

その人は、念仏を唱えながら、やにわに、起き上がって、正座をすると、

私のベッドの縁をものすごい勢いでドンドンドン!とたたき始めた。

これには私も驚いてナースコールを再び鳴らした。

あの勢いで私のお腹を叩かれたらたまらないと、思ったからである。

その人は、ナースコールに我に返り、「どうしましたか?」と・・・

どうしたもこうしたないもんだと、彼女の顔を見た。

彼女は事の顛末をまったく知らないようであった。

夢遊の為せる業であったのである。

その後、彼女は、何食わぬ顔で吸引をすると、再び床に着いた。

不思議な光景であった。

その後私が、眠りにつけなかったことは言うまでもない。

このエピソードを彼女には、なぜか話をしなかった。

見てはならないものを見てしまった気がしたからである。

ある人は、休日に自宅で休んでいる時に、

深夜突然目を覚まし、隣に私がいない事に驚いて、

「彰さんがいない!」と、飛び起きた事もあったそうである。

このエピソードは、後に私に話してくださった。

笑うに笑えぬ話である。


こうしてみると、日勤の方々はもちろん、夜勤の方々にもかなりの精神的負担や

それなりのプレッシャーをおかけしているなあと痛感するのである。

これも、ALS疾患の副作用であろうか。

ALS疾患の夢をまったくみないのは、

もしかすると神の配慮かと思うのである。

「夢にまで」と。

もしもALS疾患が治った時には、

ALSで苦悩する凄まじい夢を見るのではないかと思うのである。

そう思ったら、なぜかぞっとするのである。

ドンドンドン!