2005.08.31



結婚当初、妻はよく夢を見ている様であった。

「どうしたんだ?何の夢をみたんだ?」と訪ねても、

「うん。ちょっと。」と、言って、多くを語らない。

妻は、自分のことを語ることも、聞かれるのも好きではなかった。

そんな妻の性格を理解するには、多少の時間がかかった。

それが、しばしば口論の原因にもなった。

二人で買い物をした後に、よく本屋に立ち寄った。

妻は出入り口の近くの雑誌を立ち読みするのが癖であった。

私は、奥の文芸書や新刊書を立ち読みした。

ある時妻は、実用書のコーナーに立ち寄って、熱心に読んでいたので、
何を読んでいるのかなと、のぞき込んだら、「夢占い」であった。

なるほどと、思って、事態はかなり深刻な様であった。

妻の性格からして、そのことに、追求も言及もしなかった。

以来、妻の夢を特に気にすることもなかった様に思う。

妻と別れて15年近く経つが、相変わらず、

妻はよく夢を見ているのだろうか、それとも、

全く夢を見なくなったのであろうか、

ふと、気になったりするのである。

あの時、妻が立ち読みいていた”夢占いの本”では

妻の夢占いはどんな結果であったのであろうか。

ふいに、妻の面影が浮かんでは、モザイクをかけたように

微妙になって消えた。